最近、日常生活において思わず「無心」になる機会がありました。「無心」とは何も 思わない、何も考えない心の状態のことです。一つはサウナで温まった身体で水風呂 に浸かった瞬間です。あまりの水の冷たさに私の思考は感覚に支配されました。もう 一つは朝のウエイトトレーニングで、限界まで追い込んだ後のインターバルです。こ ちらも荒い呼吸が次第に整う過程で、思考の世界から感覚の世界へ導かれたように思 います。私たちは、いつもなにかを思い、なにかを考えています。そうしたときは、 つねに緊張感がある状態です。しかし、いったん思ったり考えたりすることをやめる と、張りつめた心がときほぐされ、言いようのない「すがすがしさ」がわいてきます。 「われを忘れる」とよく言いますが、ひとつのことに集中することで「無心」になる ことができるのです。そうして心がやすらいだ状態を、日常生活でも保つことができ たなら、どんなことが起きてもイライラしたりクヨクヨしたりすることなく、あらゆ る判断を正しく行うことができるのかもしれません。そこで私はいつの頃からか、そ のための五つのトレーニングに取り組むようになりました。
・禅的瞑想(ただひたすら、心のなかで数を読み瞑想する)・歩行(ただひたすら歩く) ・写字(ただひたすら、文字を書き写す) ・柔体(ただひたすら、からだをやわらか くする) ・清掃(ただひたすら、掃除をする)
心がやすらぐからといっても私には生活がありますので、毎日朝から晩までサウナに 籠もるわけにはいきません。だからこそ、人と接しているとき、なにか問題が起きた ときにでも、おだやかな心で対処することができるように、これら五つのトレーニン グを日常生活の中で習慣化することで「心のやすらぎを保つ努力」を続けていこうと 思います。
vol.202 運を味方につけよう
「あなたは運がいい方ですか」経営の神様と呼ばれる松下幸之助さんは採用面接の際に そのように尋ねたそうです。そして「はい、私は運がいいと思います」と答える人を よく採用していたと言われています。そこで私自身の過去と現在を振り返ってみると 「私はとても運がいい方だ」としか思えないのです。聞くところによると私は、幼い頃 に大雨で増水した側溝に落ちて流されたにも関わらず、危機一髪で救い上げられたこ とがあったそうです。また、十代の頃バイクの事故で宙を舞った際は、相手の軽トラ ックが横転しても、私にはかすり傷一つありませんでした。さらに最近では、お気に 入りのアーティストのライブに申し込むと、抽選結果は最前列のど真ん中だったので す。このように人は自分にとって都合がいいことが続くと「私は運がいい」と喜ぶも のです。しかし生きていれば誰しも、どちらかと言うと思い通りにいかないことの方 が多いものではないでしょうか。私も確かに、病気で苦しんだり、人と人とのいさか いを目の当たりにしたり、受け入れがたい要求を迫られたこともあります。以前の私 はそんなことが起こるたびに、イライラしたりクヨクヨしていました。しかし現在で は、都合の悪いことが起きた際には「起こるべくして起こった」と受け止め「気づか せてくれて、ありがとうございます」と感謝することで「運が悪いな」と思いがちな 出来事に対しても、無意識の状態で「運がよかった」と思えることが増えてきました。
「運は決して偶然ではない。心の素直な人に訪れる」 松下幸之助
松下幸之助さんの言葉に触れると、「運がいい」と思える人にラッキーな出来事が起き 続けている、という訳ではなさそうです。だからこそ、人生いろいろありますが人は 「心の置きどころ」次第で、松下幸之助さんの問いかけに対して「はい、私は運がいい と思います」と答えることができるはずだ、と思えてならないのです。本年も、皆さ まの毎日が幸運に満ちた一年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。
vol.203 徳に隣あり
美容師という仕事は「いらっしゃいませ」から「ありがとうございます」で終わるもの ではありません。若い頃に修行先で教わったのは「いらっしゃいませ」から次の「いら っしゃいませ」までが私たちの仕事だということでした。そのことを知った日から、お 客さまをお見送りする際には「ありがとうございました」ではなく「ありがとうござい ます」と感謝を伝えること、そして「また、お待ちしております」とお声かけをするこ とを、三十年以上にわたって常としてきました。当時の先輩が伝えて下さったのは、磨 いてきた技術でヘアスタイルを完成させるだけでは足りない、ということだったのでし ょう。人として受け入れられ、好かれ、そして「また会いたい」と思っていただくこと。 それは決して簡単なことではありません。また「よし、バッチリできた」という手応え を感じたお客様が、再来されなかったり、反対に「もっと、ああすればよかった」と落 ち込み、反省したお客様が、なぜかその後も足を運んでくださったりする。それもまた、 この仕事の味わい深いところだと感じています。
「論語」に「徳は孤ならず、必ず隣あり」という孔子の言葉があります。徳をもった人 は孤立することなない、必ずとなりに共鳴する人がいるものだ、ということです。徳 とは、難しく考える必要はありません。人に対する思いやりや正しい行いのことです。 人のことを思いやることのできる人は、孤独になることはなく必ず慕われるものです。 池田繁美 『素心学講義』(致知出版社)
すばらしい人生とは、すばらしい人に囲まれた人生であるように思います。ブレスが人か ら好かれる、すばらしい人を育む会社になれたなら、きっと周囲の方々の幸せに寄与でき るはずです。だからこそ、これからもブレスは、美容の仕事を通じて、社員一人ひとりの 人格を高めてまいります。
vol.204 魅力的な人物
若い頃、定休日の月曜日に修行先のオーナーと毎週のようにテニスをしていた時期があ りました。テニスが終わったら、毎回美味しい食事をご馳走になることができるという 私の下心もありましたが、部活未経験の私は見よう見まねで、夢中になって球を追いか けていたように思います。それ以来、長年やってる割には大した実力ではありませんが現在もテニスを楽しんでいます。そんななか、これまで十年以上通っていたテニススク ールを数ヶ月前に移籍しました。現在お世話になっているスクールでは、コーチとしっかりストロークを打ち合う時間を大切にしているからです。私がどこに打ち込んだとしても、こちらが打ちやすい球を返してくれることで、成功体験を繰り返すことができるのです。それは一時間半のレッスンの中で五分程度のひとときですが、おかげで私が思い描く理想のフォームに、少しづつですが近づいている手応えを感じています。
中国の古典『呻吟語』には、「人間の魅力」についてつぎのように書かれています。
「深沈厚重なるは、これ第一等の資質。磊落豪勇なるは、これ第二等の資質。聡明才弁なるは、これ第三等の資質」どっしりと落ち着いていて、心にぬくもりのあること。これが、いちばん大切な性質である。つぎは、ものごとにこだわらず豪快であること。三番目は、頭がよく話もうまいこと_というのです。 (月刊「素心」第124号)
若い頃の私は、三番目の「聡明才弁」に憧れを抱いていました。人よりも仕事ができて、 相手を論破するほど、うまく話すことで注目されることに価値があると思っていたのです。 しかし年齢を重ね、魅力的な人物とのご縁が深まることで考え方が変わってきました。現 在の私は、落ち着いて人の話を受け入れ、相手の歩幅に応じた成長を願い、そっと場を 整える「深沈厚重なる人物」こそが目指す人物像なのです。コーチが返してくれる一球一 球はその姿勢そのものだと感じています。相手の技量にあわせる器の大きさはとても 魅力的です。
vol.205 心を耕そう
「いい人生とはいい人と歩む人生」という言葉がありますが、現在の私はまさに「と てもいい人生を歩んでいる」と実感しています。なぜなら三十一歳で耕心塾(人間学 を学ぶ勉強会)に入塾した頃の私は、毎日のように妻とケンカをしていましたが、今ではほとんどケンカすることがなくなったからです。塾で最初に学んだのは「徳は いやり」ということでした。そうして私が「思いやり」を身につけた結果、ケンカがなくなった、と言いたいところですが、残念ながらそうではありません。長年学んできた割には、見ての通り私はいまだに欠けたところだらけです。それでも何とか「思いやり」を身につけようと毎日努力しています。その必死な後ろ姿を妻がきちんと見てくれている。そのおかげに違いないと思えてならないのです。耕心塾へ参加したきっかけは、二十歳から十七年間お世話になった、修行先の美容室で社員教育の一環と してとして「行ってきなさい」と声をかけられたことでした。私はそのとき渋々参加 したのですが、開業後も学びを続け、気がつけば二十年以上に渡ってこの「学びの場」 にお世話になっています。
【塾生の声】・「謙虚さがなくなる兆候」を学び、傲慢な自分に気付きました。・身近 な人への思いやりを意識するようになり、周囲の人との人間関係が良好になりました。 ・心が穏やかになり、笑顔であいさつができるようになりました。・感謝の気持ちを きちんと伝えることができるようになりました。・マネをしたくなる先輩や十代〜八 十代の生涯の友ができました。・問題の解決法を学びました。
このように修行先で学ぶ場を与えられた私は、「恩を送る」気持ちで毎年ブレスの社員に対して、耕心塾に「行ってきなさい」と入社順に声をかけるようにしています。今年度も五月から【第32期耕心塾】が開講されます。私を「いい人生」へと導いてくれたこの学びに、少しでも関心のある方は、見学にお連れしますので、どうぞお気軽に お声かけください。
vol.206 すばらしい人生
新入社員の青木香宝さん入社おめでとうございます。そして全国に数ある美容室の中
から就職先としてbreathを選んでいただきありがとうございます。香宝さんは本日
「一人前の美容師」を目指して、ブレスに入社されました。この道を選んだからには
「石の上にも三年」という言葉のとうり、日々努力を重ねて優れた技術を身につけて
ください。というのはよくある話ですが、私はそうは言いません。腕を磨くだけでは
「上手い美容師」になれるかもしれませんが「すばらしい人生」を歩むには不十分だと
思えてならないからです。香宝さんにとっての「すばらしい人生」とはどのような人
生でしょうか。私はすばらしい人生とは「すばらしい人に囲まれた人生」であると考
えています。以前朝礼で奥本店長がこう言ってくれました。
行きたくなる会社で働き、帰りたくなる家庭を築く
本当にその通りだと思います。朝行きたくなる職場があり、そこには共に高め合える
仲間がいて、自分に会うことを楽しみにして足を運んでくださるお客様がいる。その
お客様に対して美容の仕事を通じて、安心と喜びを届けることで感謝される。そして
家に帰れば大切な家族が待っている。それはとても「すばらしい人生」ではないでし
ょうか。しかしこれは技術だけでは築くことは出来ないでしょう。人として好かれ、
信頼され、期待されるなかで育まれていくはずです。技術についてはここにいる、す
ばらしい先輩たちが、日本中どこへ行っても求められる技術をこれからしっかりと伝
えて行きます。そのうえで今日から香宝さんは「人から好かれる」美容師を目指して
ください。その心構えが香宝さんの「すばらしい人生」につながっていくことを、私
は心から信じています。本日はご入社、本当におめでとうございます。
(令和八年度株式会社ブレス入社式挨拶の原稿より)
vol.201 心のやすらぎを保つ工夫
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